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損賠権の益金計上で判決 争点は「知り得た立場

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 不法行為によって損害を被ったとき、加害者に対して発生する「損害賠償請求権」。

この取扱いについて、注目を集めている裁判があります。

 原告は、埼玉県でビルメンテナンス会社を営む会社社長。

平成16年4月、会社に税務調査が入り、調査の過程で同9年9月〜同15年9月までの各事業年度で架空外注費の損金計上が明らかになりました。

架空外注費の正体は経理部長Aによる詐欺でした。

 税務署は、外注費の架空計上を理由に、法人税の更正処分および重加算税の賦課決定処分を下しましたが、このとき損害賠償請求権(以下「損賠権」)を外注費架空計上中の事業年度の益金に算入しました。

 会社は「架空計上は従業員の詐欺によるもの。この従業員に対する損賠権は回収が困難で、益金にすべきではない」と主張。

更正処分と賦課決定処分の取消しを求め争いになりました。

 損賠権は、他人の債務不履行や不法行為によって損害を受けたとき、それを補てんする権利。

税務署は、「損害発生と同時に損害額と同額の損賠権を得る。Aは各事業年度で一定の預金・資産を有し給料収入を得、ほかの債務を返済している。損賠権を実現することが不可能とは認められない」と主張しました。

 一審の東京地裁判決では、「不法行為が秘密裏に行われた場合などは損害の発生や加害者を知らないことが多い。権利が発生しても行使することは事実上不可能」として、「被害者である法人が損害および加害者を知ったときに、権利が確定したものとしてその時期の属す事業年度の益金に計上すべき」と結論づけました。

 ところが東京高裁判決では、詐欺が振込依頼書や請求書をチェックすれば容易に発覚するものだったことから、「各事業年度において損賠権につきその存在・内容を把握できず、権利行使を期待できないような状況にあったということは到底できない」として当該各事業年度の益金算入を認めました。

 会社側は上告中。最終的な判断は最高裁にゆだねられます。


(エヌピー通信社)




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