T 平成22年7月までに発布された法令等
○ グループ法人課税の紹介
平成22年度税制改正で本年10月1日から施行される事項が二つあります。
その一つは、清算所得課税の改組であり、他の一つは、グループ法人課税の創設です。
そのうち清算所得課税の改組につきましては、4月号で紹介しましたので、今回はグループ法人課税の創設について事前に紹介しておくことにします。
1.グループ法人課税の目的
グループ法人課税は、完全支配関係者間の取引に関して規定している課税制度です(法法2十二の七の五、法令4の2)。
したがって、通常であれば一の者の所有する資産の評価損については、損金に算入できない(法法33)のに100%グループ内企業に譲渡して損金の額を計上することができます。
また、一の者に所得の額があれば寄附金の損金算入枠が生じます(法法37)。
その枠を利用して100%グループ内の赤字企業に寄附を行うことにより租税を軽減することができます。
そうした租税回避行為を防止するために強制規定としてのグループ法人課税が創設され、周知期間をおいて本年10月1日から施行されるということができます。
2.グループ法人課税の対象となる取引
グループ法人課税の目的から次の6つの取引について、グループ法人課税を強制適用することとしています。
(1) 100%グループ内の法人間の資産の譲渡取引等に係る譲渡損益の繰延べ(法法61の13@)
(2) 100%グループ内の法人間の寄附に係る損益の額の不算入(法法37A、25の2@)
(3) 100%グループ内の法人からの受取配当等の益金不算入(法法23C)
(4) 100%グループ内の法人の株式の発行会社への譲渡に係る損益の不計上(法法61の2O)
(5) 100%グループ内の子会社株式の消滅損の不計上(法法61の2O)並びに子会社の欠損金の引継ぎ及び未処理欠損金の引継ぎの制限(法法57AB)
(6) 大法人の100%子会社等に対する中小特例の制限(法法66E二他)
3.帳簿価額の修正
対象取引のなかの寄附取引については完全支配関係にある子法人の株式について受贈益及び支出した寄附金の各々に係る親法人所有の子法人株式の帳簿価額の附替え修正を行うことになります(法令119の3E、法令9@七)、このことは、親法人が子法人の株式を譲渡する際に各子法人株式の譲渡損益の計上を正常化するために行うものです。
4.申告調整
グループ法人間の資産の譲渡取引等に係る譲渡損益等の繰延べについては、当該取引時においては譲渡損益を消去する申告調整を行い、原則として当該資産がグループ法人外に譲渡されたときに通知を行い当該資産の譲渡損益について戻入れを行うことになります(法法61の3他)。
5.適用時期
グループ法人課税の対象となる取引のうち(3)及び(6)の取引については、平成22年4月1日以後の取引について適用されますが、他の取引については平成22年10月1日以後の取引について適用されます。
法学博士・税理士右山昌一郎
エッサムファミリー会 会報(平成22年8月号)より
記事提供 ゆりかご倶楽部
記事提供:ゆりかご倶楽部
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