国税庁は、2010事務年度(2010年7月から2011年6月までの1年間)の個人事業者に対する所得税調査状況を公表しました。
近年の所得税調査の特徴として、高額・悪質と見込まれるものを優先して深度ある調査(特別調査・一般調査)を重点的・集中的に行い、一方で実地調査までには至らないものは電話や来署依頼による「簡易な接触」で済ましております。
2010事務年度の調査においても、調査件数では約14%の実地調査で、申告漏れ所得金額全体の6割強(62.6%)を把握しており、近年は実地調査を中心とした効率的な所得税調査が続いております。
今年度の調査件数は、東日本大震災の被災者に対する税務相談への対応等に事務量を割いたことから、前年度に比べて0.6%減の69万4千件にとどまりましたが、うち65.7%に当たる45万6千件から同2.9%減の9,601億円の申告漏れ所得を見つけました。
また、追徴税額は同6.8%減の1,239億円となりました。
これは、1件あたり平均138万円の申告漏れに対して、約18万円を追徴した計算になります。
実地調査における特別調査・一般調査(高額・悪質な不正計算が見込まれるものを対象に行う深度ある調査)は、前年度比9.5%減の5万7千件でしたが、うち86.0%にあたる4万9千件から同8.3%減の総額5,036億円の申告漏れ所得を見つけ、同10.6%減の929億円を追徴しました。
件数では全体の8.2%に過ぎませんが、申告漏れ所得金額全体の5割強を占め、これは、調査1件あたりの申告漏れは879万円と、全体の平均138万円を大きく上回ります。
また、実地調査に含まれる着眼調査(資料情報や事業実態の解明を通じて行う短期間の調査)は、調査件数全体の5.3%の3万7千件行われ、うち73.0%の2万7千件から977億円の申告漏れを見つけ、66億円を追徴し、1件あたり平均申告漏れは261万円となりました。
このように、実地調査では、全体の約14%の調査件数で申告漏れ所得全体の6割強を把握しており、高額・悪質な事案を優先して深度ある調査を的確に実施しております。
(注意)
上記の記載内容は、平成23年12月19日現在の情報に基づいて記載しております。
今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。
記事提供:ゆりかご倶楽部
追記
上記の公表をみてもわかるように、申告納税制度では、実質的な課税の公平は得られないものです。
税金を取るものと取られるものの構造は変わらないので、税金を少しでも払いたくないのは、ある意味当然な人間の心理ですから、永遠に変わらない構造でしょう。
申告納税制度以外で課税の公平が得られるものを作っていく権力の知恵が必要でしょう。
しかもコストがかからないもので、国民より支持されるものでなくてはならない。
税理士 川島博巳
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