福島第一原発事故のあと、原発停止にともない節電の必要性が高まっています。
そんななか、節電、発電、蓄電に関連する製品は電力不足の解消という点で、
今後の成長が期待される市場の一つです。
とくに、「自家発電設備」「自宅用太陽光発電システム」や、つくった電気をためておける
「リチウムイオン蓄電池」、ガスで効率よく温度調節する「高効率ガス空調設備」など、
今後、売上が伸びることが予想される製品やシステムがあります。
なかでも、この分野で注目を集めているのが、ホームエネルギーマネジメントシステム
(家庭内エネルギー管理システム)です。
頭文字をとって、“HEMS” 「ヘムス」と呼びます。
ひと言でいうと、これは家庭内の電力の使用状況を可視化するシステムです。
センサーやITを駆使して、家庭内のエアコンや照明、IHクッキングヒーターなどの機器を
システムに繋ぐことで、その電力使用量をパソコンや携帯電話から、リアルタイムで見ることが可能になります。
そうすることで、利用者の節電意識が高まり電力を効率よく使うようになることがこのシステムの狙いです。
たとえば、誰もいない子ども部屋のエアコンがつけっぱなしになっていると、モニターに状況が映し出され、
電気のムダづかいが一目でわかります。
さらには、リビングにいながら、このエアコンをオフにでき、簡単に節電ができます。
これまでの節電というと暑さ寒さを我慢したり、暗いなかで不便を強いられたり、
と辛さが伴うものでしたが、ヘムスは苦痛のともなわない、明るい節電ができる期待のシステムといえます。
経産省によると、ヘムスやスマートメーターを含むエネルギー関連住宅「スマートハウス」の
国内市場規模は2020年に3兆4,755億円に成長すると予測されています。
くわえ、ヘムスには補助金も用意され、政府が導入を促進する事業の一つになっています。
現在、市場拡大を見越して、パナソニック、東芝のほか、自動車部品大手のデンソーと
いった企業が市場に参入しています。
これらヘムスの新製品投入は、単に「エネルギー・エコ」分野の発展の証としてだけではなく、
家電業界にとって別の意味あいを含んでいるともいえます。
これまで、電機業界の花形といえば、薄型テレビや携帯電話などの単体の製品が主流を占めていました。
ただし、日本のお家芸ともいえるこれらハイテク製品は、近年、ことごとく外国企業に世界シェアの上位を
奪われています。そのなか、今後、日本のメーカーが生き残っていくには、ヘムスのように、
さまざまな製品が組み合わさり作用することで、
価値を生み出す「システム」にビジネスチャンスの可能性があるといえます。
ヘムスに繋がるのは、各種家電製品や発電、蓄電器とさまざまな機器です。
ヘムスの機能、性能を高めるには、これら機器に関して多くの知識が必要となります。
実は、これら機器の全てに高い技術を持っているのは、日本企業以外では世界に多くいません。
ここに外国企業には真似できない、日本独自の強みがあるともいえます。
すでに製品単体では、競争に勝つことが難しい今、ヘムスの背景には、
このような「システム」に、生き残りの道を探るメーカーの期待がうかがえます。(了)
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
記事提供:ゆりかご倶楽部
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