■ 「株式保有特定会社」としての株式評価が合理性がないとして排斥され、
原則的評価(類似業種比準価額)として判示された裁判例
1.事案の概要
本件は、原告(以下「X」といいます。)が父親が死亡(平成16年2月28日)したことにより
父親所有のP社株式も含めて相続税申告(平成16年12月27日)を行った。
その後某税務署長は、P社株式については、P社における株式保有割合が25%を超えるので
類似業種比準価額(P社は大会社該当)で評価すべきではなく、
相続税財産評価基本通達の株式保有特定会社としての純資産価額で評価すべきものであると
認定して更正処分等(以下「本件処分」といいます。)を平成19年2月13日付で行ったものです。
Xは、本件処分について不服申立てを行ったが棄却処分とされたので、
平成21年1月21日本件訴えを提起したものです。
2.裁判の経緯
第一審(東京地方裁判所)は、原告Xの申立てにより平成2年に設けられた株式が
25%超保有されている会社の株式を「株式保有特定会社」として取扱い、
原則的評価方式の例外として株式保有特定会社と認定し、
当該株式を純資産価額方式で評価することが合理的か否かを審理しています。
その鍵となるのは「保有割合25%超の当該株式」(以下「25%ルール株式」といいます。)を
相続等により取得した相続人等は、通達により直ちに「株式保有特定会社の株式」として
例外的評価を強制されることが合理的か否かの問題になります。
3.「25%ルール株式」の審理
裁判所は、平成2年に設けられた「25%ルール株式」の取扱いが原告の相続開始時
(平成16年2月28日)まで改正されずにそのまま適用されているが、
このことは果して合理的であるかという点が審理されています。
すなわち、平成2年当時の法人企業統計によれば有価証券の保有割合は12.3%であり、
判定割合25%の約2分の1であり、かつ、バブル時代又は租税回避防止の視点から、
そのときに合理的であったとしても、平成15年の同統計による有価証券の保有割合は
17.39%であり、平成22年度は22.5%となっており、2分の1基準からみて厳しすぎると考えられ、
25%ルールとしての株式保有特定会社の特例的評価を、そのまま強制することは合理性を
欠くものと判断しています。
さらに、納税者が不利になるような判定基準の採用については、
当該基準を設けた国側が実態に合い且つ合理的であることを立証しなければならないとして
本件処分のすべてを取り消す判決(平成24年3月2日)を行っています。
この結果更正処分に係る相続税額約76億円が取り消され、
当初申告相続税額約62億円が維持されたことになります。
この判決について国側は、不服として控訴しています。
3.判決評釈
当該株式保有特定会社に係る通達は、
旧措法69の4(相続開始3年以内の取得価額評価・昭和63年12月31日以後の相続に適用)の
回避行為に対するものとして、平成2年通達として設けられたものです。
その後旧措法69の4は、大阪地裁で「憲法違反の疑がある」(平成7年10月11日判決)との
判決を受けて、平成8年1月1日以降廃止されたものです。
しかし、本法が廃止された後も当該通達だけが不合理のまま残り、
課税が強行されるところに重大な税務行政上の問題があるといえます。
U 9月の税務
夏休みとしての8月が終り来年から法定された税務調査手続きに変るので駆込み調査が
多くなると思われますので準備して下さい。
月末が日曜日になりますので申告期限等は10月1日になります。
法学博士・税理士右山昌一郎
記事提供:ゆりかご倶楽部
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