原油価格の下落が続いています。
ここ何年か、原油は1バレル=100ドル前後でしたが、2014年後半から下落がはじまり、現在では50円を下回る水準になっています(*)。
原油価格の下落は日本経済にメリットをもたらします。
一例を挙げると、原油安はガソリンの価格を引き下げるため、家計にゆとりが生まれ、結果、消費の活性化が期待できます。
ガソリンのほか、石油から生まれる物(プラスチック、ゴムなど)の価格が下がれば、これらを原材料として扱っている企業はコスト低下の恩恵を受けます。
価格の下落は、2016年度には回復するという見方もありますが、下落傾向はしばらく続くといわれています。
「逆オイルショック」が起こると、どのような悪影響が及ぶのでしょうか。
一つはロシア経済の危機で、その影響は欧州、さらに世界全体に及ぶことが挙げられます。
ロシアはサウジアラビアと並ぶ原油の生産国で、原油安により収益が減り、痛手を負いました。
加え、ロシアの通貨、ルーブルが暴落したため、物価上昇や対外債務(外国からの借入金)の倍増が起こりました。
万が一、対外債務の返済不能(債務不履行)が起これば、ロシア経済と関係の深いヨーロッパはもとより、世界経済全体が混乱に陥ることが予想されます。
(*)原油価格はニューヨーク先物市場のWTI(ウェスト・テキサス・インターミディエイト)の価格をもとにしています。
なぜ、原油安は起こったのでしょうか。
一つは、原油に供給過多が起こったことが挙げられます。
その一因となったのが米国のシェールガス革命により大量の原油が採掘されるようになったことがあります。
これに対して、減産して供給量を減らせば価格は戻りますが、昨年11月、OPEC(石油輸出国機構)は減産を見送ると発表し原油安を加速させました。
産油国にとって、原油安は収益の低下になるため、通常ならば価格が回復するよう、減産などの手を打つはずです。
OPECが減産を見送ったのには理由があります。
というのは、今後も原油安が続けば、米国のシェールガス企業の中には、採算がとれず撤退を余議なくされるところが増えます。
これは、OPECにとって、シェール革命で奪われた原油のシェアを回復する絶好の機会となるので、OPECは供給過多と原油安を容認したといわれています。
実は、米国シェールガス企業が被る打撃も、世界経済への悪材料だといわれています。
もともと、米国経済の好調の理由の一つは、シェールガス革命により、これまでOPECに流れていたお金が米国に流れる点にありました。
原油安が進めば、シェールガス企業の破たんが続き、結果、米経済好調の理由の一つが危うくなります。
これは、米国にとって打撃となる可能性は否定できません。
米国は世界経済の中心にあります。
傾けば、日本をはじめ、世界全体に悪影響が及ぶことになります。
こうした状況下、今後、原油安による「逆オイルショック」が起こり、世界経済は混乱に陥るのか。
原油の値動きを気にしながら、世界各国の動きを意識しておく必要があります。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
記事提供:ゆりかご倶楽部
国税庁HP新着情報 |
|
|