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HOMECONTENTSタックスニュースタックスニュース平成28年タックスニュース 2016.11.07


【時事解説】内部留保かベアか

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 経済活性化のためには労働者の給与が継続的に上昇することが必要です。

そこで、政府は企業の内部留保が潤沢なことから、産業界にベースアップ(ベア)の実施を求めていますが、なかなか思うように進みません。

日本の企業は概してベアに慎重で、内部留保を優先する傾向が多いように見受けられます。

 その一番の理由は、業績を維持し続けられるのか確信が持てないことにあります。

ベアをすれば今後恒常的に人件費の増加を招くことになり、予想に反して景気が落ち込めば、人件費が業績の足を引っ張ることになります。

そこで、企業は利益増に伴う従業員還元を、できればベアではなく一時金の増加で対応したいというのが本音です。

 ただ、私は企業が利益増をストレートにベアに結び付けられない背景にはこうした経済的要因だけではなく、日本企業独特の社会構造にもその原因があるのではないかと思います。

 株式会社は株主有限責任に見られるように、ビジネスリスクが個人に及ばないように工夫されたシステムですから、財源があれば余分な内部留保などせず、大胆にリスクを取りに行けばいいのです。

会社が利益を上げれば、その利益は成長のための投資に目一杯向けるべきでしょうし、それでも使い切れない財源が残るなら株主にでも従業員にでも配分するのが筋です。

その代わり、その会社が時代のニーズに合わなくなったら、ビジネスから速やかに撤退し、時代に合致した新しい会社が参入すればいいというのが、資本主義が想定している基本的なダイナミズムです。

 その場合、問題になるのは、時代遅れになり、ビジネスから退出すべき会社に勤めていた従業員の雇用です。

失業している間の社会保険なり、次の会社に円滑に移る手続きなどが整備されていなければなりません。

本来、こうしたセーフティネットを張るのは国の仕事です。

しかし、我が国ではこうした雇用対策が欧米先進国に比べ不十分です。

国の不十分なセーフティネットを補っているのが民間企業だという言い方もできます。

会社に対して、ある意味能力以上に雇用確保が期待されます。

不況だからといって簡単に解雇はできませんし、賃下げにも困難が伴います。

 日本の会社は、いわば国が行うべき社会保障の一部を肩代わりしているともいえます。

それだけではなく、会社は精神的コミュニティとしても不可欠な存在です。

つまり、日本の会社はただ利益を追求する営利企業体であるばかりではなく、従業員の生活共同体としても重要な役割も果たしているのです。

属している会社がなくなれば、単に稼ぎの場を失うだけでなく、精神的拠り所までなくしてしまうことになりかねません。

その結果、会社の存続は会社そのものだけでなく、従業員にとっても死活的に重要なのです。

日本の経営者は従業員を思えばこそ、利益が出ているからといって安易な賃上げに踏み切らず、まさかのために利益を全部外部に流出させずに、会社内部に留保しておきたいと考えるのです。

 私は、利益が出ているから、従業員にベアとして容易に分配できるだろうという発想は、日本の企業の置かれた状況を見れば、やや短絡的ではないかと思います。


(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)




記事提供:ゆりかご倶楽部




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