特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度に関する質疑応答事例
平成 18年度の税制改正により、特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度(法法35)が創設され、平成
18年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。
この質疑応答事例は、これまでに寄せられた主なご質問に対する回答を質疑応答形式により取りまとめたものです。
(制度の概要)
(問1)平成 18年度の税制改正で創設された「特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入」
制度について、制度の概要を教えてください。
(答)特殊支配同族会社が、その法人の業務を主宰している役員(個人に限ります。以下「業務主宰役員」といいます。)に対して支給する給与の額のうち給与所得控除額に相当する部分として計算される金額は、損金の額に算入しないこととされています(法法35@、法令
72、72の2@〜C、I〜L)。
この制度の適用対象となる特殊支配同族会社とは、同族会社の業務主宰役員及びその業務主宰役員と特殊の関係のある者(以下「業務主宰役員関連者」といいます。)がその同族会社の発行済株式又は出資の総数又は総額の
90%以上に相当する数又は金額の株式又は出資を有する場合その他一定の場合に該当するその同族会社(その業務主宰役員及び常務に従事する業務主宰役員関連者の総数が常務に従事する役員の総数の半数を超えるものに限ります。)をいいます(法法35@、法令72)。
ただし、特殊支配同族会社の基準所得金額が一定の金額以下である事業年度など一定の事業年度については、本制度の適用はありません(法法35A、法令
72の2D〜L)。
(業務主宰役員の意義)
(問2)業務主宰役員とはどのような役員をいうのですか。
(答)「業務主宰役員」とは、法人の業務を主宰している役員一人を指す概念であり、個人に限ることとされています(法法35@)。
具体的には、税務上の役員(法法2十五、法令7)のうち、会社の経営に最も中心的に関わっている役員をいうこととなります。通常は、代表取締役や社長といわれる役員がこれに該当することになることが多いと考えられますが、必ずしも肩書きのみにより判定するのではなく実質的な関わりにより判定することになります。なお、判定に当たっては、例えば、事業計画の策定、多額の融資契約の実行、人事権の行使等に際しての意思決定の状況や役員給与の多寡などもその判断の要素になると考えられます。
(常務に従事する役員の意義)
(問3)常務に従事する役員とはどのような役員をいうのですか。
(答)本制度の適用対象となる特殊支配同族会社は、業務主宰役員及び常務に従事する業務主宰役員関連者の総数が、常務に従事する役員の総数の半数を超える同族会社に限られています(法法35@)。
この「常務に従事する役員」とは、会社の経営に関する業務を役員として実質的に、日常継続的に遂行している役員をいいますが、「常務に従事する役員」に該当するか否かについては、その業務の内容や従事の実態などを踏まえ、その実質に応じて個々に判断することとなります。
例えば、代表取締役は会社を代表し、会社の業務に関する一切の行為をする権限を有するため、当然に「常務に従事する役員」に該当することになります。
また、副社長、専務又は常務などの職制上の地位を有する役員については、その会社の枢要かつ責任のある地位にあり、会社の経営に関する業務を実質的に、日常継続的に遂行している役員と考えられることから、「常務に従事する役員」に該当することとなります。
使用人兼務役員については、その役員としての職務が、単に取締役会のメンバーとして業務執行に関する意思決定に参画するだけでなく、会社の経営に関する業務を実質的に、日常継続的に遂行している場合には、「常務に従事する役員」に該当することとなります。
具体的には、その者に対する役員給与のうち役員としての職務に対する給与がその会社の使用人としての職務に対する給与を超えるようなときには、「常務に従事する役員」に該当するものとして取り扱われます。
なお、会計参与や監査役については、そもそも会社の経営に関する業務を行う役員ではありませんので(会社法
374@、381@)、通常は「常務に従事する役員」に該当しません。
(同一の内容の議決権を行使することに同意している者の意義)
(問4)同一の内容の議決権を行使することに同意している者とはどのような者をいうのですか。
(答)特殊支配同族会社に該当するかどうかを議決権の数によって判定するに当たり、個人又は法人との間で当該個人又は法人の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者がある場合には、その同意している者が有する議決権は当該個人又は法人が有するものとみなし、かつ、当該個人又は法人(その議決権に係る会社の株主等であるものを除きます。)はその議決権に係る会社の株主等であるものとみなすこととされています(法令
72C)。
また、業務主宰役員と特殊の関係のある者に該当するかどうかの判定における「同族会社を支配している場合」の判定に当たっても同様に取り扱われます(法令72A)。
この「同一の内容の議決権を行使することに同意している者」かどうかは、契約、合意等により、個人又は法人との間で当該個人又は法人の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している事実があるかどうかにより判定されますが、例えば、次のような場合は同一の内容の議決権を行使することに同意している事実があるものと考えられます。
@株式の所有が組合形態で行われている場合で、特定の組合員の意思により議決権が行使される旨の組合契約等における合意があるとき
A株式の所有が信託形態で行われている場合で、委託者、受託者又は他の受益者の意思又は指図により議決権を行使する旨の合意又は信託行為における定めがあるとき
B株式を相互に持ち合っている場合で、議決権の行使についてお互いの意に沿うよう行使する旨の合意があるとき
C 当該個人又は法人に対して継続的に白紙委任状を提出しているとき
なお、単に過去の株主総会等において同一内容の議決権行使を行ってきた事実があることや、当該個人又は法人と出資、人事・雇用関係、資金、技術、取引等において緊密な関係があることのみをもっては、当該個人又は法人の意思と同一の内容の議決権を行使することに同意している者とはなりません。 |
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