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HOMECONTENTS役員給与特集役員給与に関する質疑応答事例  平成18年12月 国税庁


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役員給与に関する質疑応答事例  平成18年12月 国税庁

役員給与に関する質疑応答事例

平成 18年度の税制改正により、法人の役員給与に関する規定(法法34)が改正され、平成18年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。
この質疑応答事例は、これまでに寄せられた主なご質問に対する回答を質疑応答形式により取りまとめたものです。

1 定期同額給与
(定期給与の額を改定した場合の損金不算入額)
(問1)当社(年1回3月決算)は、平成 18年5月に開催した定時株主総会において、取締役Aに対し月額 50万円の役員給与を支給することを決議していますが、Aの統括する営業部門の業績が好調であることから、平成19年2月に臨時株主総会を開催し、同月分の給与から月額 20万円ずつ増額して支給することを決議しました。
このように、定期給与の額を事業年度の中途で改定した場合には、その全額が定期同額給与に該当しないこととなるのでしょうか。
なお、当社は、事前確定届出給与の届出は行っていません。


(答)役員に対して支給する定期給与(その支給時期が1月以下の一定の期間ごとであるものをいいます。以下同じ。)の額につき事業年度の中途で改定が行われた場合は、その改定に係る定期給与のうち、次に掲げるものについては、定期同額給与に該当し、原則として損金の額に算入されることとされています(法法34@一、法令69@)。
@ 定期給与の額につき当該事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3月を経過する日(以下「会計期間3月経過日」といいます。)までにその改定がされた場合における次に掲げる定期給与(法令69@一)
@) その改定前の各支給時期(当該事業年度に属するものに限ります。
Aにおいて同じ。)における支給額が同額である定期給与
A) その改定以後の各支給時期における支給額が同額である定期給与

A 定期給与の額につき当該法人の経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由によりその改定がされた場合(減額した場合に限り、@に該当する場合を除きます。)の当該事業年度のその改定前の各支給時期における支給額及びその改定以後の各支給時期における支給額がそれぞれ同額である定期給与(法令69@二)
きます。)の当該事業年度のその改定前の各支給時期における支給額及びその改定以

したがって、事業年度の中途で定期給与の額を改定した場合であって、それが上記@及びAのいずれにも該当しないときには、原則として、その事業年度における定期給与の支給額の全額が、定期同額給与に該当しないこととなり、損金不算入となります。

ただし、定期給与の額について、ご質問のような事業年度の中途の増額改定が行われた場合であって、増額後の各支給時期における支給額も同額であるようなときなどは、従前からの定期同額給与とは別個の定期給与が上乗せされて支給されたものと同視し得ることから、上乗せ支給された定期給与とみられる部分のみが損金不算入になるものと考えられます。

したがって、貴社の場合には、当初、定期給与の額として定めていた金額(50万円)に、別途 20万円を上乗せして支給するとのことですから、増額改定後の支給額(70万円)のうちの 50万円部分に関しては、引き続き定期同額給与の支給が行われているものと考えられますので、平成 19年3月期における損金不算入額は、40万円(平成 19年2月分及び3月分の各 20万円)となります。

なお、ご質問のケースとは逆に、事業年度の中途で定期給与の額を減額した場合で上記@又はAに該当しないとき、例えば、経営の状況が悪化したものの「著しい悪化」までは至らないケースについても、原則として、その事業年度における定期給与の支給額の全額が、定期同額給与に該当しないこととなります。
ただし、当初、定期同額給与として支給していた給与について減額改定を行い、減額後もその各支給時期における支給額が同額である定期給与として給与の支給を行っているときには、本来の定期同額給与の額は減額改定後の金額であり、減額改定前は、その定期同額給与の額に上乗せ支給を行っていたものであるともみられることから、減額改定前の定期給与の額のうち減額改定後の定期給与の額を超える部分の金額のみが損金不算入となります。


(役員の分掌変更に伴う増額改定)
(問2)当社(年1回3月決算)では、代表取締役Aが急逝したことから、急遽、平成 18年10月1日に臨時株主総会を開催し、取締役Bを代表取締役に選任するとともに、Bの役員給与を月額50万円から前任者Aと同額の月額100万円に増額改定する旨の決議を行いました。この場合、当社がBに支給する役員給与は定期同額給与に該当しないこととなるのでしょうか。

(答)役員に対して支給する定期給与の額につき増額改定が行われた場合は、その改定が、会計期間3月経過日までに行われたものであるときを除き、その定期給与は定期同額給与に該当しないこととされています(法法34@一、法令69@)。
このように、増額改定が会計期間3月経過日までとされているのは、
@ 役員給与の支給額を定める時期が、一般的に定時株主総会の時であること
A 事業年度終了の日間近の改定を許容すると、利益の払出しの性格を有する増額改定を認める余地が生じること
といった理由によるものです。

ご質問の場合は、定期給与の額の改定が会計期間3月経過日までに行われたものではないことから、定期同額給与に該当しないのではないかとも考えられます。

しかしながら、ご質問では、代表者の急逝というやむを得ない事情による臨時の分掌変更であり、この分掌変更に伴いBは新たに代表取締役としての職務を執行することとなります。
このように、やむを得ない事情により、役員としての職務内容、地位が激変し、実質的に新たに役員に就任したのと同様の状況にあると認められる場合には、その新たな役員就任に伴う増額改定が会計期間3月経過日後に行われたものであっても、定期同額給与として取り扱って差し支えないものと考えられます。

したがって、ご質問の場合は、増額改定前の定期給与と増額改定後の定期給与とのそれぞれが、定期同額給与として取り扱われます。

(一定期間の減額)
(問3)当社は、取締役Aが統括する部署における法令違反により行政処分を受けたことから、その社会的な責任に鑑み、臨時株主総会において、取締役Aの定期給与の額を3ヶ月間20%減額する旨の決議を行いました。
この場合、当社が支給する役員給与はその全額が定期同額給与に該当しないこととなるのでしょうか。


(答)損金の額に算入される定期同額給与とは、役員に対して支給する定期給与で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるものをいいますが(法法34@一)、ご質問のように、特定の役員の不祥事等により一定の期間のみ役員給与を減額し、当該期間経過後は、減額前の給与の額を支給するというような場合には、各支給時期におけ
る支給額が同額でないことから定期同額給与に該当しないのではないかとの疑義が生じるところです。

しかしながら、企業秩序を乱した役員の責任を問うべく、一定期間の役員給与の減額処分を行うことは、企業慣行として定着しており、これを同額の定期給与の支給と取り扱わないとすれば、実態からかけ離れることにもなりかねませんし、また、いったん支給した定期給与をその役員が自主的に返還した場合には定期同額給与として取り扱われるところ、その実質が同じである役員給与の減額処分について異なる取扱いとすれば著しくバランスを失することになるとも考えられます。

したがって、ご質問のように、役員給与を一時的に減額する理由が、企業秩序を維持して円滑な企業運営を図るため、あるいは法人の社会的評価への悪影響を避けるために、やむを得ず行われたものであり、かつ、その処分の内容が、その役員の行為に照らして社会通念上相当のものであると認められる場合には、減額された期間においても引き続き同額の定期給与の支給が行われているものとして取り扱って差し支えありません。


(合併に伴う定期給与の増額)
(問4)製造業を営む当社(年1回3月決算)は、平成 19年2月1日付で当社製品の販売子会社であるA社を吸収合併することとしています。当社の取締役(財務担当)甲は、A社の取締役(営業担当)を兼務しており、合併後は当社の取締役(財務担当兼営業担当)として留任する予定です。
甲に対し、従来、当社は月額 100万円、A社は月額 80万円の定期給与を支給しておりましたが、合併に伴い、当社の支給する定期給与の額を合併前の当社及びA社のそれぞれの定期給与の合計額である月額 180万円に増額する予定です。
この場合、当社が甲に支給する定期給与は、定期同額給与として取り扱われますか。


(答)役員に対して支給する定期給与の額につき増額改定が行われた場合は、その改定が、会計期間3月経過日までに行われたものであるときを除き、その定期給与は定期同額給与に該当しないこととされています(法法34@一、法令69@)。このことから、合併法人である貴社における役員給与の支給状況だけをみた場合、会計期間3月経過日後の増額改定であることから、定期同額給与に該当しないのではないかとも考えられるところです。

しかしながら、ご質問の場合は、合併に伴って合併法人である貴社が被合併法人A社の事業その他の権利義務を包括的に承継し、その上で役員甲の被合併法人での職務を合併後の合併法人における職務として引き継ぐものであり、その増額改定後の給与の額も合併前に貴社とA社で支給していた給与の合計額であることからすれば、被合併法人A社において役員甲に対して支給していた定期同額給与を合併後に貴社において継続して支給するにすぎないものであると考えられます。
このように、合併前後において、実質的に、その役員の職務内容に変更がなく、また、その役員の職務に対する役員給与の支給額が何ら変更されていない場合には、その役員給与の額は定期同額給与として取り扱って差し支えないものと考えられます。
したがって、ご質問の場合、貴社が甲に支給する定期給与は、定期同額給与に該当します。


(分割に伴う定期給与の減額)
(問5) 当社(年1回3月決算)はA事業部門とB事業部門を統括する取締役甲に対し、月額100万円の定期給与を支給しています。
 平成19年2月1日付で、当社を分割法人、C社を分割承継法人とする分社型分割を行い、B事業部門を分割し、C社に承継させることとなりました。
この分割に伴い、取締役甲は、新たにC社の取締役に選任されB事業部門を統括するとともに、当社の取締役として引き続きA事業部門を統括する予定です。
 そこで、当社における甲の定期給与の額をその職務に応じて月額60万円に減額改定するとともに、別途、C社からその職務に応じて月額40万円の定期給与を支給したいと思いますが、それぞれ定期同額給与として取り扱われますか。


(答)役員に対して支給する定期給与の額につき減額改定が行われた場合は、その改定が、会計期間3月経過日までに行われたものであるとき又は法人の経営状況の著しい悪化等により行われたものであるときを除き、その定期給与は定期同額給与に該当しないこととされています(法法34@一、法令69@)。
このことから、分割法人である貴社における役員給与の支給状況だけをみた場合、定期同額給与に該当しないのではないかとも考えられるところです。

しかしながら、ご質問の場合は、分割に伴って、貴社が分割承継法人C社に分割事業に係る権利義務を承継させた上で、役員甲の貴社での職務を分割後のC社における職務として引き継がせるものであり、その職務に応じた減額改定後の貴社の給与の額とC社から新たに支給する給与の額の合計額が分割前の給与の額と同額であることからすれば、貴社においてその役員に対して支給していた定期同額給与を分割後にC社において継続して支給させ、当該金額分を貴社において減額するにすぎないものであると考えられます。
このように、分割前後において、実質的に、その役員の職務内容に変更がなく、また、その役員の職務に対する役員給与の支給額が何ら変更されていない場合には、その役員給与の額は定期同額給与として取り扱って差し支えないものと考えられます。
したがって、ご質問の場合、貴社が甲に支給する定期給与は、定期同額給与に該当します。
また、甲は分割に際し新たにC社の役員として就任していますので、分割後にC社が支給する定期給与の額が、その事業年度の各支給時期において同額である場合は、定期同額給与に該当します。


(役員に対する歩合給)
(問6)運送業を営む当社の専務取締役Aは、役員としての職務のほか、使用人と同様に配送業務にも従事しています。
当社は、Aに対し、月額の固定給のほか、月々の各人別の運送収入に応じた歩合給を支給することとしていますが、この歩合旧は定期同額給与に該当しますか。
 なお、Aに対する歩合給の支給基準は、使用人に対する支給基準と同一です。


(答)損金算入の対象となる定期同額給与は、「その支給時期が1月以下の一定の期間ごとであり、かつ、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与」をいうことから、たとえ一定の算定基準に基づき、規則的に継続して支給されるものであっても、その支給額が同額でない給与は、定期同額給与には該当しないこととなります(法法 34@一)。
したがって、各月の支給額が異なることとなる歩合給や能率給等は、一定の利益連動給与に該当するものを除き、損金の額に算入されません。
歩合給や能率給等は、一般には、使用人兼務役員に対して支給されるケースが多いものと思われますが、使用人兼務役員に支給する使用人としての職務に対する給与について歩合制を採用している場合は、不相当に高額なものに該当しない限り、原則として、損金の額に算入されます(法法34@A)。

なお、ご質問のように、固定給の部分と歩合給の部分とがあらかじめ明らかとなっている場合は、固定給の部分については、定期同額給与の要件を満たす限り、損金の額に算入されます(法法34@一)。

ところで、従来、平成 18年改正前の法人税に関する取扱いである法人税基本通達9−2−15《役員の歩合給若しくは能率給又は超過勤務手当》に基づいて役員に対する歩合給を損金の額に算入していた法人も存すると思いますが、そのような法人であっても、上述のとおり役員に対する歩合給等は損金の額に算入することはできませんので、ご注意ください。

なお、そのような法人にあっては、今後、役員給与について給与体系の見直し等を行うこともあろうかと思いますが、給与体系の見直しには相応の期間を要することや役員給与支給規程等の改定時期は一般に定時株主総会の時であると考えられることなどを考慮すれば、役員給与の改定までの間、やむを得ず、歩合給を支給している法人については、その改定までの間に支給した歩合給を定期同額給与として取り扱って差し支えないものと考えられます。

具体的には、平成 18年4月1日以後最初に開始する事業年度において支給した歩合給及び当該最初に開始する事業年度の翌事業年度に係る会計期間3月経過日までに行われる役員給与の改定までの間に支給した歩合給は、それぞれ定期同額給与として取り扱って差し支えありません。


2 事前確定届出給与

(定めどおりに支給されたかどうかの判定)
(問7)当社(年1回3月決算)では、平成 18年6月 26日の定時株主総会において、取締役Aに対して、定期同額給与のほかに、同年 12月 25日及び平成 19年6月 25日にそれぞれ 300万円を支給する旨の定めを決議し、届出期限までに所轄税務署長へ届け出ました。
この定めに従い、当社は、平成 18年 12月 25日には 300万円を支給しましたが、平成 19年6月 25日には、資金繰りの都合がつかなくなったため、50万円しか支給しませんでした。
この場合、平成 18年 12月 25日に支給した役員給与についても、損金の額に算入されないこととなるのでしょうか。


(答)事前確定届出給与として当該事業年度の損金の額に算入される給与は、所定の時期に確定額を支給する旨の定めに基づいて支給するもの、すなわち、支給時期、支給金額が事前に確定し、実際にもその定めのとおりに支給される給与に限られます。
したがって、所轄税務署長へ届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合には、事前確定届出給与に該当しないこととなりますが、ご質問のように、2回以上の支給がある場合にその定めのとおりに支給されたかどうかをどのように判定するのか、という問題があります。
この点、一般的に、役員給与は定時株主総会から次の定時株主総会までの間の職務執行の対価であると解されますので、その支給が複数回にわたる場合であっても、定めどおりに支給されたかどうかは当該職務執行の期間を一つの単位として判定すべきであると考えられます。

したがって、複数回の支給がある場合には、原則として、その職務執行期間に係る当該事業年度及び翌事業年度における支給について、その全ての支給が定めどおりに行われたかどうかにより、事前確定届出給与に該当するかどうかを判定することとなります。
例えば、3月決算法人が、平成 18年6月 26日から平成 19年6月 25日までを職務執行期間とする役員に対し、平成 18年 12月及び平成 19年6月にそれぞれ 200万円の給与を支給することを定め、所轄税務署長に届け出た場合において、平成 18年 12月には 100万円しか支給せず、翌年6月には満額の 200万円を支給したときは、その職務執行期間に係る支給の全てが定めどおりに行われたとはいえないため、その支給額の全額(300万円)が事前確定届出給与には該当せず、損金不算入となります。

ただし、ご質問のように、3月決算法人が当該事業年度(平成 19年3月期)中は定めどおりに支給したものの、翌事業年度(平成 20年3月期)において定めどおりに支給しなかった場合は、その支給しなかったことにより直前の事業年度(平成 19年3月期)の課税所得に影響を与えるようなものではないことから、翌事業年度(平成 20年3月期)に支給した給与の額のみについて損金不算入と取り扱っても差し支えないものと考えられます。


(職務執行機関の中途で支給した事前確定届出給与))
(問8)当社(年1回3月決算)では、平成 18年5月 26日の定時株主総会において、取締役Aに対して、定期同額給与のほかに、「平成 18年5月 26日から平成 19年5月25日までの役員給与として平成 18年6月 30日及び同年 12月 25日にそれぞれ 300万円を支給する」旨の定めを決議し、届出期限までに所轄税務署長へ届け出ました。
この定めに従って支給した平成 18年6月 30日及び同年 12月25日の役員給与は、事前確定届出給与として、当期(平成 19年3月期)において損金の額に算入できるでしょうか。
それとも、これらの給与はいずれも職務執行期間の前半に支給するものなので何らかの損金不算入額が生じますか。


(答)役員の職務執行期間は一般的には定時株主総会から次の定時株主総会までの1年間であると解されることからすれば、貴社が6月に支給した給与も 12月に支給した給与も翌年5月末までの1年間の職務執行の対価の一部となるものであり、また、民法上委任の報酬は後払いが原則とされていることを考えると、このような支給形態を採ることについて、税務上問題があるのではないかと考える向きもあるようです。

しかしながら、使用人への賞与が盆暮れの時期に支給されているのが一般の企業慣行であることを考えると、役員に対して同時期に賞与を支給することはあながち不自然なことではないともいえます。
そこで、法人が、役員への賞与の支給時期を使用人への盆暮れの賞与と同じ時期とし、かつ、毎期継続して同時期に賞与の支給を行っている場合には、事前確定届出給与として当該事業年度の損金の額に算入することとして差し支えありません。