3月末に決算を迎える企業は多いと思います。
決算前のチェックポイントは数多くありますが、意外と影響が大きいのが在庫(棚卸し資産)です。
たとえば、売上が1000万円、見掛け上の経費(原価)等が800万円で見掛け上の利益が200万円出ていたとしましょう。
しかし、期末の在庫高が期首の200万円から100万円増えて300万円になっていた場合、利益は100万円増えて300万円になってしまい、その分の税金が増えることになります。
逆に、期末在庫高が期首よりも減っている場合には利益が減ってしまうため、配当などの利益処分が思ったようにできないケースもあります。
特に在庫高が増えているようなケースでは、試算表上は利益が出ていることになっていても、それは回転資金が在庫に変わっているだけで、自由に使える現金や預金が思ったよりも少ないという場合も出てきます。
さらに、その在庫品が早々に売れる見込みのある商品であれば良いのですが、不良在庫や長期保有在庫、過剰在庫、または新製品が出てしまったために陳腐化してしまった商品の在庫だった場合は深刻です。
それらの在庫は現金化することが困難なのにも関わらず、会計上は会社の利益の一部を構成することになってしまうのです。
また季節商品の売れ残り在庫も要注意です。
来シーズンに販売できるチャンスがあれば問題ありませんが、多くの季節商品には流行が売れ行きに影響するものが多く、見掛け上は販売可能でも実質的には販売不可能な場合が多いのです。
カレンダーや干支関連商品の場合などは、商品が販売できるチャンスはほとんどありません。
このような不良在庫、過剰在庫、長期保有在庫、陳腐化してしまった在庫、季節商品の売れ残りなどがある場合は、決算前の処分を検討するのが賢明です。
決算前に「売れない在庫」や「売ることが困難な在庫」の処分を考えることは、会社の正常な状態を把握するためにも重要です。
特に卸売業や小売業の場合はさまざまな事情の「在庫」を抱えているケースが多くあります。
また、製造業などの場合でも「作ったけど売れない在庫」や「使う見込みの無くなった材料在庫」などが残っているケースがあります。
これらの在庫の処分にあたっては、まず少しでも現金化できるものを現金化する検討をしましょう。
たとえば「決算セール」や「在庫一掃セール」などで、売れる在庫を売り払ってしまうのです。
売ってしまえば多少でも利益の減少をくい止めることができますし、経理や事務上の手間も一番楽な場合が多いのです。
また、リサイクル可能な商品についてはリサイクル業者に有償で払い下げるという方法もあります。
現金化が難しい商品については評価損の計上を検討します。
評価損とは在庫の評価額を下げることです。
その分、利益は減ってしまいますが、売れない商品であればむしろその方が正常な状態です。
ただし、法人税では「評価損」が認められる場合が定められており、その場合とは「破損などにより通常の方法によって販売できない場合」や「災害により著しく損傷した場合」「季節商品が売れ残り、今後通常の価格で販売できない場合」「新製品が出て、今後通常の方法で販売できない場合」などです。
単に売れないから、過剰だから、価格競争が厳しいからなどの理由では評価損は計上できません。(法人税基本通達9-1-4、9-1-5、9-1-6)
ただし、在庫の評価法に「低価法」を選択していれば、在庫の取得原価よりも時価が低くなっていた場合、時価を評価額とすることができます。
ただ、「低価法」の場合はいちいち全ての在庫商品の時価をチェックする必要があるため、面倒といえば面倒な方法です。
会社ごとの事情に合わせて選択しましょう。
評価損が計上できない「過剰在庫」や「長期保有在庫」は現金化が困難な部分の廃棄を検討します。
評価損の計上では在庫が残るため商品の販売チャンスは残りますが、廃棄した場合は損失(廃棄損)が確定します。
廃棄する際の注意点としては、廃棄したことを証明できるマニュフェストや写真を残すようにすることです。
これらが無いと、税務調査時において廃棄損が認められない場合があります。
参考URL
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