現在、話題になっている「ふるさと納税」について、菅義偉総務相は25日の記者会見で「自治体への寄付金を全額控除」する方式で検討したいとの考えを示しました。
「ふるさと納税」とは、納税者が税金(住民税)の一部を自分の出身地の自治体に納めることができる制度のことです。
確かに夕張市の例を見るまでもなく、景気回復が遅れているといわれる地方では財政難に苦しんでいる自治体も多く、同税制は地域間格差の是正という現在の課題に対する対策のひとつかもしれません。
また、納税者の中にも、自分の出身地の自治体が財政難に苦しんでいる状況を知れば、同税制を利用しようと考える人は多いと思われます。
しかし、住民税には、現在住んでいる自治体のサービスに対する対価であるという考え方(いわゆる受益と負担の原則)がありますし、同税制が導入されると住民税の算定、通知、徴収などに関わる自治体の事務工数も激増するでしょう。
また、当然、税収の減少が予想される都市圏などは猛反対の姿勢を見せています。
実際に「ふるさと納税」が実現するのは非常に難しいと思われます。
そこで、菅総務相が検討の方針を打ち出したのが「自治体への寄付金の全額控除」です。
現在でも自治体への寄付金については、一定額を所得から控除できる「寄附金控除」という税制が所得税にあります。
「自治体への寄付金の全額控除」は、この寄附金控除を拡張して自治体に対する寄附金を所得税、または住民税から税額控除しようという考え方です。
たとえば、税額の1割を控除限度額とする税額控除制度を創設すれば、現実として「ふるさと納税」と同じ効果が得られることになります。
ただ、そうなると税収の減少が予想される財務省や都市圏の自治体の猛反発は必至です。また、住民税が絡むとなると、納税者が申告する際の手間が複雑化する懸念もあります。実現に向けてのハードルは決して低くないでしょう。
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