年金形式の生命保険について、相続税と所得税の二重取りは違法として国を訴えていた裁判の二審判決が出ました。
一審では違法という画期的判決が出て注目されていた裁判ですが、二審の判断は「適法」。原審の判決が覆ったわけです。
同訴訟は、妻が夫の死亡時に受け取った一時払いの保険金4000万円と年230万円を10年間受け取れる特約年金の受給権(評価額約1380万円)分の相続税を支払ったところ、長崎税務署が年金230万円に対しても「雑所得」にあたるとして所得税を課したことから、妻が所得税分の課税取り消しを求めたものです。
特約年金の受給権と受給額の両方に課税することが二重課税にあたるかどうかが問われていた裁判です。
一審の長崎地裁は、これについて「保険金の受給権と実際に支払われた保険金は実質的には同じ。同一の資産に二重課税は許されない」と課税取り消しを命じましたが、国はこれを不服として控訴していました。
今回の控訴審(福岡高裁)の適法判断は、妻が受け取る年金を夫の死亡後に発生した「支分権」に基づくものと認定したことによるものです。保険金の受給権には「基本権」と「支分権」の二つがあり、基本権は年金を受け取ることができる権利、支分権は各支給期月に実際に年金の支給を受ける権利のことをいいます。
つまり、相続税が課税された年金受給権は基本権に基づくもの、受け取った年金は支分権に基づくものだから、両者は法的に異なるもので個々に課税することが適法であるという判断です。
特約年金の受給権と受給額について「実質的には同じ」とした一審の判断を真っ向から覆したわけです。
しかも、受け取った年金は夫の「死亡後に発生した」支分権に基づくものなので、相続税の対象である保険金ではなく、所得税の課税対象としての年金にあたるということです。
また、福岡高裁は加えて、年金払いの死亡保険金に所得税を課すことが立法当時に予定されていた(昭和38年の税制調査会答申)ことも、受け取った年金に所得税を課税することが適法とされる一つの理由だと判示しています。
妻(原告)は最高裁に上告しています。
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