税務上、よく使われる用語のひとつに「役務の提供」があります。
役務とは、一般的には「他人のために行う労務やサービス」(大辞林第二版)のことで、単純にサービスを表す言葉として解されています。
税務においてもこれと同様に「役務の提供」を解する場合があり、その場合の「役務の提供」とは、法人や個人が事業として行っているサービスのことをいいます。
もっとも顕著にこれを表現しているのは消費税法の基本通達です。
同通達(5-5-1)では、消費税の対象となる「役務の提供」について、「土木工事、修繕、運送、保管、印刷、広告、仲介、興行、宿泊、飲食、技術援助、情報の提供、便益、出演、著述その他のサービスを提供することをいい、弁護士、公認会計士、税理士、作家、スポーツ選手、映画監督、棋士等によるその専門的知識、技能等に基づく役務の提供もこれに含まれる」とされています。
ただ、税務全般における「役務の提供」の意味はもう少し広範囲です。
たとえば、親会社が子会社に行う経営アドバイスなどの支援活動、役員や従業員に対する社宅の貸与、取引先に従業員を派遣しての販売協力なども、すべて「役務の提供」と考えられています。
これらの場合の「役務の提供」とは、事業であるかないかに関わらず、会社が行う行為のうち、物品や資産など「モノ」や「カネ」の交付や譲渡等が行われない行為をいうことになります。
前述の消費税法基本通達のように、個々の税法や通達等が対象となる「役務の提供」の範囲等を明確に規定している場合もあります。
しかし、実は「役務の提供」自体を明確に定義している法令等はないのです。
従って、それが「役務の提供」にあたるかどうかは、個々の事例によって判断するしかありません。
さらに、「役務の提供」は、金銭、物品、資産など、「モノ」を対象とした取引きと比べて取引きの態様が様々であるため、税務上の取り扱いが個々に定められている場合も少なくありません。
たとえば、売上や費用の計上日の基準となる「役務の提供された日」、家賃や保険など「継続的な役務の提供」に対する処理、会社の役員等や取引先に対する「役務の無償提供」などは実務上で良く問題になります。
意外と「役務の提供」をめぐる税務は複雑なのです。
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