会社法の規定(218条)により、「株券を発行する旨の定款の定め」を廃止して株券不発行会社となる株式会社が増えてきているようです。
会社法の施行後、株式会社は株券を発行しないことが原則となりました。
しかし、会社法施行前の定款に「株券不発行の定め」が無い会社は、自動的に株式発行会社になっていますので、現在でも株式を発行することになっている会社は多いと思われます。
しかし、このところ「取締役会非設置」や「役員任期の伸長」など、会社法のメリットを活用できるように定款を変更する会社が増えてきています。
そして、そのついでに「どうせ株券を発行しないのであれば」と株券不発行会社になる会社が増えてきているのです。
ただ、株券不発行会社となった場合には注意すべき点があります。
■株主名簿の重要性があがっている
株券不発行会社の場合、株主名簿が株主を証明する唯一の書類になります。
また、株券不発行会社の場合、株主からの請求に応じて「株主名簿記載事項証明書」を発行する義務が生じます(会社法122条第1項)が、この証明書は株主名簿の記載事項を証明するものです。
さらに、会社法130条には「株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載し、又は記録しなければ、株式会社その他の第三者に対抗することができない」と規定されています。
これを逆に言えば、株主名簿に名前が記載されていれば、「自分が株主」だと会社に対抗できるということです。
このようなトラブルを回避するためにも、株主名簿を適正に管理できる体制を整えておくべきでしょう。
■特に名義株が残っている場合は注意
昔は会社設立時に複数の発起人が必要だったため、親族や友人の名義を借りて会社を設立することが良くありました。
オーナー等と名義人の信頼関係が継続していれば、問題が生じることも少ないのですが、代を重ねるとそうもいきません。
本当の持ち主や名義人が亡くなった際に相続税の問題が生じることもあります。
名義株はできるだけ早く解消しておいた方が良いのです。
しかし、名義株だということが証明できるもの(本人同士の合意、覚書、念書など)が無い場合、安易に名義の書き換えを行ってしまうと、贈与税や株式譲渡に係る所得税の問題が発生する場合があります。
また、名義人から名義の書き換えを拒否されたり、提訴されることも考えられます。
したがって、名義の書き換えにあたっては、専門家に相談するなど慎重に行う必要があります。
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