アベノミクスはトリクルダウン効果を期待して発動された政策ですが、トリクルダウンは起きなかった、というのが現段階の大方の見方です。
トリクルダウンとは「したたり落ちる」と訳されますが、経済学においては、裕福な人が先に豊かになり、彼らが経済を牽引することにより経済全体を成長させ、それに伴い貧しい人も豊かになると考えます。
この理論に立てば、経済の牽引役である富裕層の勤労意欲を削ぐような政策は好ましくないので、税制は次のような形に構築されます。
所得税は累進税率をなだらかにして、高所得者の税率を引き下げます。
そして、富裕層が高所得を実現するには、企業がしっかり儲けなければなりませんから、法人税率の下げも必要になります。
そうすると、所得税や法人税収が減少しますから、帳尻を合わせるために、消費税率を上げることになります。
折から進んだグローバル化はその風潮を加速させます。
富裕層や企業は十分な財力があり、有利な税制を求めて、本拠地を移転することが可能だと考えられていましたから、富裕層に対する所得税や法人税の国際間の税率引き下げ競争といった様相も帯びていました。
我が国でも、こうした流れに沿い、所得税の最高税率は、1970年代、1980年代の75%(所得金額8,000万円超)から、2000年代には37%(所得金額1,800万円超)にまで引き下げられました(現在の最高税率は45%(所得金額4,000万円超)に若干上がっています)。
法人税の基本税率も1980年代のピーク43.3%から順次引き下げられ、現在は23.2%になっています。
そして、所得税と法人税の税収減を補うべく、1989年に3%で導入された消費税は、紆余曲折を経ながら現在は10%の税率(軽減税率8%)になっています。
このように富裕層に対する所得税の累進税率を緩和する一方、貧富に関係なく消費に対して一律に課税される消費税率を高くするのは、貧富の格差を拡大するものだ、という批判は当初から根強く存在していました。
それに対する有力な反論が「トリクルダウン理論」だったわけです。
トリクルダウン理論が有効で、貧しい人にも果実がゆきわたるためには、経済全体が成長しなければなりません。
ところが、我が国の2000年から2020年の実質GDPの伸び率は20年間でたった9.5%に過ぎません。
年率に換算すれば、0.5%にも満たないのです。
経済全体のパイが増えない状態で、富裕層の所得が増加すれば、貧しい人々は益々貧しくなるということになりますから、貧富の格差は拡大します。
アメリカは自由な競争をできるだけ拡大することで、経済を活性化させるという新自由主義を標榜する国のトップランナーであり、トリクルダウン理論はその新自由主義政策を正当化する柱の理論でした。
そのアメリカでもトリクルダウン効果に疑念を呈されています。
トリクルダウン効果に疑問があるとすれば、富裕層に対する所得税や法人税の税率引き上げといったことも、これから俎上に上ってくるかもしれません。
富裕層への累進税率の強化や法人税の増税により生まれた税収を財源に、福祉や公共投資を拡大することは、貧富の格差縮小に貢献するだけではなく、低所得層の消費拡大につながり、経済成長にも資することが期待されます。
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)
記事提供:ゆりかご倶楽部
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参考URL
■国税庁HP新着情報(国税庁トップページ)NATIONAL TAX AGENCY
3月10日朝時点での新着情報は、以下の通りです。
国税庁ホームページ掲載日:2023年3月9日
≪トピックス≫
●税務大学校との共同研究に関する第3期公募テーマを掲載しました
■財務省
・財務省 各年度別の税制改正の内容
□総務省 税制改正(地方税)
■ご意見箱 財務省
□法令解釈通達 |国税庁
■消費税の軽減税率制度について|国税庁
◆国税不服審判所/公表裁決事例
◆国税庁/税務訴訟資料 |
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