地域振興の研究分野においては、「現代社会は地域と中小企業の時代」という論とともに、「革新的な中小企業」の存在が注目されています。
そして革新的なITベンチャーを多く創出するシリコンバレーに関する一連の研究では、人的ネットワークへの関心が高まっています。
また、地域を知識創造と学習の場と捉える理論においては、人によるクリエイティビティ(創造力)が地域発展の原動力であり、異質なものとのふれあいが地域振興に必要である点が指摘されるなど、地域振興の担い手となる人に着目する議論の潮流が起こっています。
地域振興の担い手となる人には、共通する特徴があります。
それは従来のものの見方に囚われない新たな視点をもっているということです。
こうした人材は革新の担い手であるという点からイノベーション人材と呼ぶことができます。
新しい視点をもつイノベーション人材を生み出すには2通りの方法があります。
一つは、イノベーション人材を地域外から受け入れる方法です。
最近では地方の定住対策において、Uターン人材という主に都市部出身などの地域外の人材を招き入れる政策が推進されていますが、このようなUターン人材は地域内の発想に囚われない視点を持っていることが多いです。
もう一つの方法は、地域内からイノベーション人材を生み出す方法です。
しかし地域内の人材に新たな視点を持たせるには、地域外での生活を経験させたり、地域外の様々な人と交流させたりするなどといった新たな視点を持つための機会を提供することが必要になります。
では、新たな視点をもつイノベーション人材が、地域振興の担い手として活躍するためにはどのような取り組みが求められるのでしょうか。
イノベーション人材を地域外から受け入れた事例に沿ってみていきましょう。
長野県小布施町は、人口11,400 人の小さな町で、葛飾北斎の肉筆画を展示する北斎館を中心とした景観整備と、住民参加によるまちづくりにより、「北斎と栗の町」「歴史と文化の町」として全国から注目されています。
同町にある造り酒屋I社の代表取締役を務めるSさんは、1993年に来日したアメリカペンシルバニア州生まれの外国人女性です。
Sさんは、I社において和風レストランをオープンしたり、木桶仕込みの伝統的な酒造りの手法を復活させたりするなど様々な変革に取り組みました。
その一方で、海外で評価の高い葛飾北斎の研究会を発足させ、1998年には小布施町で「国際北斎会議」を開催するために尽力し、また文化サロンやマラソンなどのイベントによる町おこしの企画も行いました。
しかし、こうしたSさんの活躍の背景には、I社のグループ会社の社長が、Sさんの後ろ盾となって、Sさんに余計な軋轢を起こさせないように事前にアドバイスしつつ、Sさんを自由に活動させたことがあるといわれています。
このように、イノベーション人材は新しい視点を持っているがゆえに、地域内の人々との間に摩擦を起こすことが予想されます。
このため、イノベーション人材の視点を地域振興につなげるためには、摩擦を調整する調整者の存在が必要となるのです。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
記事提供:ゆりかご倶楽部 |
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