「ノマドワーキング」という言葉をご存じでしょうか。
3月に発行された書籍『ノマドライフ』(本田直之著/朝日新聞出版)がベストセラーになり、インターネット上でも目にする機会が増えました。
どのようなものか、ひと言でいうと「働く場所を自由に選択する」、新たなワーキングスタイルを指します。
ノマドワーカーは、自宅やカフェ、新幹線、ときには公園のベンチをも自身のオフィスにします。
自宅近くのカフェで調べ物をしながら資料を作成し、顧客にメールで送り、翌日は公園のベンチにて仕事のパートナーと携帯電話で打ち合わせる。
そんな自由な働き方がノマドワーキングです。
働くための固定した場を持たないので、オフィスの個々の机は不要になり、企業はオフィス賃料を大幅に削減できるというメリットもあります。
このように、ノマドは企業も従業員も両方にうれしいスタイルだといえます。
ただし、誰もが適しているわけではありません。
ノマドワーキングと親和性が高いのは営業職のように出張や外出の多い人や、デザイナーやジャーナリストといったクリエイティブな(カフェのほうがよいアイデアが浮かぶような)仕事に従事している人。
とくに、フリーランスで仕事をしている人が向いているといわれています。
10年前ならば、そんな働き方なんて荒唐無稽、不可能なことだと一笑に付されていたでしょう。
だいたい、会社の外で仕事をするとなると、資料を持ち歩くのも大変ですし、必要な資料を一つでも忘れようものならばオフィスに取りに戻らなければなりません。
むしろ効率が下がるのではないかと危惧する方もいるのではないでしょうか。
ノマドワーキングが実現した背景にあるもの、それはIT技術の発展です。
近年、クラウド・コンピューティング(ネットワークを経由してサービスを利用する形態)により、どこにいても、好きなときにインターネットに接続し、資料の閲覧や修正、メールチェックができるようになりました。
ネット上に資料が保管されているので、重い書類を持ち歩くことやオフィスに忘れることもありません。
このクラウドの技術なくして、ノマドワーキングは生まれなかったでしょう。
ただし、企業が取り入れるには、いくつか注意しなければならないことがあります。
なかでも、コミュニケーションがメールに偏りがちなので、互いの思いが伝わりにくいという問題にぶつかることが少なくありません。
対策としてはパーティなどのイベントを積極的に開き、仲間と顔をあわせる機会を意識的に増やすといったことが有効です。
そして、最大の課題はサボタージュの管理です。
自律していない人がノマドワーカーになると、監視がないことをいいことにユーチューブ閲覧に没頭して、ムダに一日を過ごしてしまうこともあるでしょう。
これに対しては、評価方法を変えるなど、従来のマネジメントと同様に体制づくりが必要になります。
ノマドワーキングはオフィス・スペースや移動のムダが省け、従業員に自由で働きやすい職場環境を提供できるというメリットをもたらします。
これらメリットを最大限に享受するため、企業がマネジメントしなければならない要素は、モチベーションやコミュニケーション、チーム内の信頼関係と、いつの時代も同じ。
働き方が変わっても人間の本質はそう変わるものではないようです。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
記事提供:ゆりかご倶楽部
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