世間の話題を集めたいわゆる「社会保障・税の一体改革法案」が、平成24年3月30日(金)に正式名称「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案」(平成24年法律第72号)(以下「消費税等改革法案」と略称します。)として国会に提出されました。
そして、今後は国会の審議に委ねることになりますが、野田総理は「消費税等改革法案」は今国会(第180回通常国会・自平成24年1月24日至同年6月21日)での成立を期すと声明しています。
したがって、今後国会で審議される消費税等改革法案の内容は審議の過程で修正されることも考慮して、内容については確定した段階で述べることとし、今回は先ず「社会保障・税の一体改革法」の趣旨について述べることにします。
T 社会保障制度の改革
わが国の社会保障制度は、昭和30年代(1960年代)に国民皆保険・皆年金といった現行の社会保障制度の基本的枠組みが整いました。
この基本的枠組みに従って医療分野では、患者が保険証1枚で自由に医療機関で受診できるフリーアクセスを実現し、かつ、公的年金は老後生活の柱として定着し、その結果世界最長の平均寿命が実現しています。
しかし、この社会保障制度を実現するために国は、毎年約38兆円の特例公債を発行し、そのうちの約28兆円(約74%)を年金特別会計等に繰入れて平成24年度の社会保障制度を維持しているということができます。
これは、少子高齢化といった人口構成の大きな変化に基づく年金受給者の増加並びに正規労働者(保険料支払者)の減少等によるものと判断されます。
したがって、現在の社会保障費約28兆円を基に約10%(1%税収約2.5兆円)の消費税を中心として所得税・相続税等の増税で補い、世代間・世代内の格差是正等のために贈与税等の減税も行うものです。
さらに国家財政の総額の減少のために国会議員の定数削減・国家公務員の給与引き下げ等を行うとするものです。
社会保障制度の目的は、憲法25条(生存権、国の社会的使命)に基づくすべての国民の生活と健康の保持です。
したがって、国民の自助制度(自前で生活していく制度)を基本として、自助ができなくなった場合の共助制度(生活は年金、健康は保険で共同して助け合う制度)及び自助・共助もできない障害者、貧困者等の公助制度(税金で補う生活保障・健康のための福祉)を基本として全世代対応型で行う必要があります。
このために社会保障制度は年金の一元化から検討しています。
U 税制度の改革
税制度の改革は「世代間・世代内の格差是正による景気浮揚」を目的として行われます。
所得税における最高税率の引上げは世代内格差是正であり、相続税の重課・贈与税の軽課は世代間格差是正であり景気浮揚に役立つものといえるでしょう。
さらに番号制度が実施され消費税における逆進性が排除できれば消費税は消費者が選択できる税目であることから国家財政の健全化の税目を消費税に求めたものと思われます。
なお、消費税引上げは公約違反ではないかの声もありますが、次の選挙日(平成25年8月30日)以後に施行されることから公約違反ではなく、そのときまでに「社会保障・税の一体改革」が完成すれば良いとされています。
法学博士・税理士右山昌一郎
記事提供:ゆりかご倶楽部
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