人口減少、少子高齢化などの影響を受けて、地域をいかに振興させるかが課題となっています。
地域産業を支えているのは企業であり、その中でもとくに中小企業が重要な役割を担っています。
地域振興を図るには2つの方策があります。
1つ目の方策が外来型開発と呼ばれるもので、行政が公共事業や補助金を導入して
産業基盤を整備する方法です。
典型的な例としては、大企業を地域内に誘致したり、工業団地を整備してさまざまな
企業を誘致したりする方法があげられます。
2つ目の方策が内発的発展と呼ばれるもので、行政や大企業に依存せず地域の企業や
住民が「自分たちの力」で地域を発展させる方法です。
これからは外来型開発によって地域振興を図るのは難しいといわれています。
グローバル化の進展によって企業の海外生産シフトが加速しているため、
日本国内の地域に企業を誘致することが難しくなっているためです。
とくに、企業誘致によって立地する企業の多くは、都市部に本社があることが多いため、
親会社のコントロールの下で方針が変更になる場合も多く、長期的な産業振興を
図ることが難しくなります。
また、地方財政は極めて厳しい状況におかれているため、
今後は公共事業や補助金の拡充に期待することは難しい状況です。
このため、これからの地域振興では内発的発展を目指すしかありません。
そして内発的発展の重要な担い手となるのが地域内に立地する中小企業であり、
中小企業が既存事業を活性化したり、新規事業を創出したりすることで事業展開を
図ることが求められるのです。
では、内発的発展によって、地域内に立地する中小企業が事業展開を図るためには何が求められるのでしょうか。
カギとなるのが、中小企業による地域資源の活用です。
地域資源とは、一般的に農林水産物や鉱工業品などといった地域の特産物や、
伝統的な技術、文化財、自然、観光資源などを指しますが、「強み」となるものを、
幅広くとらえる視点が大切になります。
地域の中小企業が地域資源を活用している事例をみていきましょう。
島根県には海士(あま)町という、隠岐諸島の中にある1島1町の地域があります。
人口は約2,600人で、人口減少と財政逼迫の状況が続いていました。
そこで、海士町では2004年に自立促進プランを策定し、守りの戦略として歳出抑制を
図ると同時に、攻めの戦略として地域資源を生かした新産業創出と定住促進を積極的に図っていきました。
地域資源活用を図る中で、海士町では2005年に株式会社ふるさと海士という企業を
設立しました。同社は町の出資による第三セクターで、町長が代表取締役を務めています。
同社では、岩がきや白いかを中心とした地域の水産資源を加工し、
鮮度を保つことのできる冷凍技術によって冷凍した状態で販売する
「隠岐・海士 島風便」ブランドを確立して、島外への販路開拓を図っています。
海士町において、こうした地域資源活用による内発的発展が可能となっている背景には、
地域振興においてリーダーシップを発揮する町長の存在や、
島の素材を使って商品開発を行うIターン移住者などといった地域振興の
担い手となる「人」が存在することがあげられます。
(株)税務研究会 税研情報センター
記事提供:ゆりかご倶楽部
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