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2013年7月の税務トピックス

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T 馬券払戻金の所得区分と外れ馬券の額に係る必要経費性(大阪地裁判決に基づいて)

 1 公訴事実:本件は、被告者甲の競馬の払戻金に係る無申告による総所得金額14億5951万2116円及び所得税額5億7174万1100円の脱税に係る刑事事件として平成23年に大阪地方裁判所に公訴を提起された事件です。


 2 本件における争点等


(1) 検察官(国側)の主張:
勝馬投票券(馬券)の払戻金に係る所得は、一時所得であり、控除すべき金額は的中した馬券(当り馬券)の購入金額のみであるから脱税額は、公訴事実記載のとおりである。
   
(2) 弁護人(被告側)の主張:

@ 本件における馬券の払戻金に係る所得は、その実態に顧みて雑所得にすべきものであり、かつ、外れ馬券の購入代金も含めて控除の対象とすべきである。
A 仮に一時所得に該当するとしても外れ馬券の額も含めて「その収入を得るために支出した金額」として控除の対象とすべきである。


(3) 争点:

@ 被告人甲の馬券払戻金に係る所得区分は、一時所得又は雑所得のいずれに該当するのか
A 外れ馬券の額は、収入を得るために支出した金額として控除の対象になるのか


(4) 裁判所の判断:

大阪地方裁判所は、平成25年5月23日判決において争点@・Aにつき次のような判断を下しました。

 (判断)被告人甲の馬券払戻金に係る所得は、雑所得に該当し、外れ馬券の額は必要経費に該当し控除すべきである。

 (理由)被告人甲は、過去10年分の競馬データを分析して、独自で考え出したユーザー得点及びユーザー抽出条件を設定(以下「本件ソフト」という。)し、PAT口座(インターネットや電話から馬券投票できるシステム)の残高に応じた購入金額で馬券を自動購入していた継続的取引に係るものである。

さらに平成16年にPAT口座に100万円を入金して以来本件ソフトを使用した結果公訴事実にあるように毎年多額の利益を得ていたので追加入金の必要もなく多額の取引を行っている。

このような被告人甲の馬券購入行為は、利益を得るための資産運用の一種であり、所得源泉としての継続性、恒常性が本件ソフトにより証明できるので当該所得は雑所得に該当する。

従って外れ馬券の額も含めて雑所得の必要経費に該当する。
しかし、脱税の罪は成立するので懲役2月、ただし執行猶予2年間の刑とする。


(5) 大阪地裁判決による脱税額等の変動:

公訴の基となった脱税額等と大阪地裁判決による脱税額等の差異を表にして示せば次のとおりとなります。

※参考URL「被告人甲に係る脱税額等変動表」をご参照ください。


(6) 留意点:

大阪地裁の本件に係る判示も娯楽を基とした外れ馬券の額は、所得の処分として一時所得の控除の対象とならないとしています。

従って、本件が控除の対象になったからとして娯楽の対象である外れ馬券の額が控除の対象になるなど誤った指導はしないで下さい。

また本件関連通達(所基通34−1(ニ))は、本判決では否定されています。
最後に私は、本判決は合理性のある判決として高く評価しています。


U 7月の税務
 7月は、税務官庁の人事異動の月で税務調査も少なく忙しい月ではないといえます。ただ税理士法施行62周年(7月15日)を忘れないで下さい。



記事提供:ゆりかご倶楽部
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