ここ数年間、自動車産業ではハイブリッドカーや電気自動車など、イノベーションが次々と起こっています。
なかでも、米国の大手自動車メーカーGM(ジェネラル・モーターズ)の動きに注目すると、そこには今後のビジネスを展開するうえで重要なヒントがみてとれます。
かつて、同社はアメリカの自動車ビッグスリー(ゼネラルモーターズ、フォードモーター、クライスラー)の一社として、世界の自動車産業をけん引してきましたが、2009年に事実上の経営破綻に追い込まれました。
ところが、最近は王座の奪還、復権へ向けて、新たな取り組みとして「次世代自動車の開発」を打ち出しています。
現在、自動車産業では「環境によい」「燃費が優れている」といった、ハイブリッド車や電気自動車の開発が花形です。
この分野で、GMはトヨタ自動車をはじめとする日本企業に後れをとってしまいました。
この先、日本の自動車メーカーが得意とする分野で競争しても、勝ち目は薄くなることが予想されます。
そこで、不毛な競争を避けるため、GMが打ち出した策は従来の延長線上にない、全く新しいコンセプトの車でした。
具体的にどこが新しいのか、ひと言でいうと、もはや自動車は移動するための輸送用機器ではなく、「秘書」のようなパートナーとしての役割を果たす点にあります。
目的地までの道案内はもとより、メールの送受信やスケジュール管理など、まるでオフィスの一室にいるように、近くに秘書を置きながら、自動車内で仕事ができるようになります。
自動車の役割を変えることで新たな顧客を創造する。これがGMの狙いです。
次世代自動車の開発を可能にした技術の一つに、インターネットへの常時接続が挙げられます。
GMが来年、市場投入する車は「LTE」(高速通信サービス)に繋がることができ、これにより動画や音声など、従来の通信環境では、快適ではなかったものがサクサクと気持ちよく利用することが可能になるのです。
また、iPhoneでもおなじみの音声認識の技術を用いることで、「明日の会議は何時から?」と言葉で話しかけると、言葉で答えを返すような機能も実現できるようになります。
さらに、期待したいのは、各種センサーを駆使した、健康状態のチェック機能です。
これにより、ドライバーに心臓発作などの不具合が生じたとき、自動で車を停止させるといったことも可能になります。
こうしたGMの動きからは学ぶべき点、そして今後のビジネスチャンスを探るヒントが得られます。
一つは、後発企業は市場のガリバー企業と同じ分野で競争するのではなく、異なった分野で勝負をかけることが重要だということです。
そこには、従来の「輸送用機器」だった自動車を「オフィス」に変え、「秘書」にしてしまうといった大胆な発想の転換が成否のカギを握ります。
そして、もう一つは、従来、自動車産業への参入は難しいと考えていた企業に対して、参入の窓口が広がったということです。
今回の例でいうなら、全く異質の産業だった、ITと自動車が融合し、新たな事業が生まれました。
自動車産業に限らずさまざまな産業で、こうした参入のチャンスが生まれる可能性があります。
その機会を逃さずに、捉えることがより重要になります。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
記事提供:ゆりかご倶楽部 |
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