新興国の高成長は世界経済を引っ張ってきました。
ここにきて、その維持が危ぶまれています。
発端は、1月23日、アルゼンチンペソが12%下落し、この影響を受けて、トルコリラや南アフリカのランドなどにまで通貨安が飛び火したことにあります。
通貨安は、さらに広がると、世界経済に大きな打撃となります。
実際、1月末は新興国の通貨への影響を懸念して、比較的安全といわれるドルや円に資金が流れ、円高が進みました。
これまでにも、世界経済には通貨安による危機がありました。
大きなところでは、1997年、「アジア通貨危機」が起こり、タイからアジア各国で通貨安が起こりました。
その影響は日本、韓国、中国と各国に及び、大きなダメージとなりました。
今回は、当時よりも、アルゼンチンから、ブラジル、ロシア、南アフリカなどと、影響範囲が広く懸念されています。
こうした不安の声が高まりながらも、2月の中旬になると、通貨安は落ち着きをみせます。
各国中央銀行が通貨安を阻止する動きを見せたことなどから、南アフリカのランドやトルコリラなどは上昇し、回復の基調を示しました。
そもそも、なぜ、今回の新興国通貨安は起こったのでしょうか。
主な理由として次の3つが挙げられています。
「アメリカの量的緩和の縮小」「中国経済の減速」「新興国の貿易赤字」
詳細は後述しますが、発端はアメリカの量的緩和の縮小にあり、これにより新興国から投資資金が流出するといわれ、これがアルゼンチンペソの下落の引き金となったとされています。
また、その根底にある、恒常的な新興国の貿易赤字も指摘されています。
なぜ、新興国通貨下落が起こったのか、詳細な理由として、次のように言われています。
一つはアメリカの量的緩和の縮小が挙げられます。
これまで、米連邦準備制度理事会(FRB)は量的緩和を実行し、米長期金利を押し下げてきました。
対する新興市場国の金利は相対的に高い傾向にあり、この高利回りを求めて資本が新興国に大量に流れ込んでいました。
ところが、量的緩和の縮小でアメリカの金利が上がれば、新興国から投資資金が流出する可能性が高まります。
これが通貨の下落につながりました。
中国経済の減速も懸念材料の一つです。
中国は年2桁の伸びを続けてきましたが、その成長は減速の傾向にあります。
とくに、今回の新興国通貨の下落は、中国の経済指標の一つ、「製造業景況感」の悪化が引き金になりました。
そもそも、新興国の通貨安の根底にあるのは貿易赤字です。
アルゼンチンなどは、貿易赤字により外貨準備金が不足しがちで、今回のような下落が起きても、十分な為替介入ができません。
これにより、さらに通貨の下落が進む構造になっています。
日本への影響は円高が考えられます。
ドル円相場は、2013年12月31日は1ドル105円39銭でしたが、今回の新興国通貨安で1ドル102円まで上昇しました。
これにより、24日、日経平均株価の終値は前日比304円安、一ヵ月ぶりの安値水準をつけました。
現状、輸出企業の多くは、余裕をもって為替レートを想定しているので、すぐに窮地に立たされるわけではありません。
ただし、安心は禁物です。
今後も通貨の変動を意識しておく必要があります。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
記事提供:ゆりかご倶楽部 |
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