企業が成長するための手法には、内部成長と外部成長の二つの方法があります。
内部成長とは、自社で人材を育て、研究開発を行い、自ら設備等の固定資産に投資して、新製品を作りながら、市場開拓をしていく昔ながらの手法です。
一方、外部成長とは、研究開発も市場開拓も既に完成してしまっている別の会社を買収して、自社に取り込んでしまうものです。
外部成長のことをM&Aといいます。
内部成長はうまくいけば、高い利益を上げられますが、成功するかどうかが不確定なことと、完成するまでに時間がかかるのが大きな難点です。
その点、M&Aは、出来上がった会社を買収するのですから、おカネはかかりますが、時間を節約できるのが大きなメリットです。
グローバル化やIT化に伴い、経営にはスピードが何より要求されるようになりましたから、M&Aの重要性は以前より一層増大しており、巨額のM&Aの報道も目につきます。
他の会社の株式を購入して、グループ化する場合、注目すべき点は買収した会社が子会社になるか関連会社になるかです。
子会社になるか関連会社になるかは様々な要因で決定しますが、一番重要なのは株式所有比率です。
株式所有比率だけでは決まらないのですが、株式所有比率15〜20%以上であれば関連会社、40〜50%以上なら子会社、というのが一つの目安になります。
会計上は関連会社では持分法が、子会社だと全部連結が適用されます。
持分法と全部連結は、関連会社や子会社の業績を親会社の連結財務諸表に取り込む会計上の手法です。
両者の根本的違いは、その会社が親会社と一体なのかどうか、言い換えれば、親会社と一蓮托生なのかどうかという点にあります。
持分法では関連会社の資産・負債は連結財務諸表に表示せず、関連会社の計上した利益だけを持分法投資損益として取り込みます。
ところが、全部連結は子会社の資産・負債を連結財務諸表に表示します。
ここで重要なのは子会社の負債が連結財務諸表に載ることです。
連結財務諸表とは親会社の株主に対する財務報告です。
全部連結では、親会社は株主に対して「子会社の債務は自分自身の債務である。
すなわち、親会社は子会社の債務に責任を持つ」と表明したことに他なりません。
法律的には株主有限責任に基づき、親会社は子会社の債務までは面倒はみないという議論は成り立つでしょうが、連結財務諸表の債務として表示したことで、会計的には親会社にとっても自分の債務だと認識したことになります。
この段階で親子会社は実質的に一蓮托生の運命共同体になります。
ところが、関連会社の債務は連結財務諸表に表示されません。
ということは、親会社は関連会社の債務に責任を持たないし、関連会社は親会社と命運を共にすることはありません。
つまり、子会社になるかどうかの本当の真意は「この会社は親会社と一蓮托生」かどうかにあります。
その会社が親会社にとって必要不可欠な会社で、その債務まで親会社が面倒をみなければならない会社だと判断すれば、子会社になるまで株式を購入し、全部連結で子会社債務を連結財務諸表の債務として表現します。
子会社になるかどうかは、株式所有比率の結果として自然に区別されるものではなく、その背後に対象会社と命運を共にする強い親会社の決意が存在しているのです。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
記事提供:ゆりかご倶楽部 |
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