「老兵の勇退」
「月日の経つのは速い」と感じています。
私が「今月の税務トピックス」を執筆してから、すでに24年が経過し私も満85歳となりました。
その間拙い文章で読みづらいところもあったかと思われますが、出来る限り税制の流れを会員の皆様にお伝えできればと努力したつもりでいます。本当に長い間お世話になりました。
T 国税通則法の改正による税務調査の変革
新国税通則法(以下「新法」といいます。)は、平成25年1月1日に施行され、その後約2年間での新法に基づく税務調査については「税務調査の件数は減少したが1件当たりの日数が増えて深度が深くなった」という声を聞きます。
このことの意味を考えてみましょう。
改正前の通則法(以下「旧法」といいます。)における税務調査は、税務署員の知識で行われ、その知識に基づき修正申告を徴すれば税務調査は完結ということでした。
しかし、新法においてはこの修正申告に対して5年間は更正の請求ができることになった関係から法律に基づかない修正申告に対して争う途が拡がったことを意味します。
裁判は証拠主義、税務行政も証拠主義に変わらなければ裁判で敗訴することになります。
(1)更正の請求に対する処分
この更正の請求についての処分は、否認する場合には否認に該当する条文を示す必要があり、かつ、裁判に勝つためには条文を支える証拠が必要となります。
「憲法30条〔納税の義務〕国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。」
すなわち、「税法のみが税務署員の税務調査の道具」に変わってきたということができます。
(2)更正の請求の処分に係る理由附記
新法では、旧法の青色申告に限定していた理由附記を改正し、すべての処分について理由附記を強制することとされました。
このことは「税務署員の処分も総額主義から税法に基づく争点主義に変更する必要がある」ことを意味します。
この(1)・(2)により税務調査は、完全に租税法律主義に基づく調査・処分でなければ裁判に勝てないことから調査件数が減少し、1件当たりの調査日数が長くなったということができます。
このことは、わが国の税制が民主税制に近づいたことを示すものであり、この制度を推進する必要があるものと思われます。
(3)通達の問題点
税務署員は、税務調査に際して通達、特に解釈通達を法律と同様に取り扱っている事例を見聞します。
しかし、通達は税務官庁間の解釈通達であり納税者が強制されるものではありません。
裁判での問題は「適用された通達が法律に照らして合理的か否か」です。
不合理通達には、裁判で対抗しましょう。
すなわち、裁判官の権限については「すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」(日本国憲法76条3項)と規定されているからです。
そこで、裁判とは訴訟を審理してどちらに非があるかなどを法律を適用して定めることをいいますが、すべての争に適合する法律がない場合もあります。
その場合に通達が裁判所に提出されることもあります。
この場合でも当該通達が法律に照らして合理的であるか否かが判断基準となります。
U 9月の税務
9月の税務は、特に多忙な税務は見当たらず通常の月の業務だと思われます。ただし、7月の税務官庁の人事異動が終わり税務調査態勢も確立した時期でしょうから税務調査は多くなるでしょう。
法学博士・税理士右山昌一郎
記事提供:ゆりかご倶楽部
9月1日朝時点での新着情報は、以下の通りです。
国税庁ホームページ掲載日:平成27年8月31日
●平成28年度 機構・定員要求について(平成27年8月)(PDF/104KB)
●平成28年度 国税庁関係予算概算要求・要望額(平成27年8月)(PDF/90KB)
国税庁HP新着情報 |
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