出国時の譲渡所得課税の特例制度の創設
はじめに
租税条約上、株式等のキャピタルゲイン(含み益)については株式等を売却した者が居住している国に課税権があることとされています。
これを利用して、巨額の含み益を有する株式等を保有したまま出国し、キャピタルゲイン非課税国(例:シンガポール及び香港等)において売却することにより、課税逃れを行うことが可能でした。
そこで、平成27年度税制改正では、これら課税逃れに対応するため、平成27年7月1日以後、国外転出(国内に住所及び居所を有しなくなることをいいます。)の時に有する有価証券等の評価額等の合計額が1億円以上の者であり、かつ、出国直近10年間において5年を超えて居住者であった者に対して、その未実現のキャピタルゲインに対して特例的に課税する制度(以下「出国時の譲渡所得課税の特例」といいます。)が創設されました。
そこで、本稿では、出国時の譲渡所得課税の特例制度について解説することとします。
T 課税要件
国外転出をする居住者が、所得税法に規定する有価証券等を有する場合又は未決済デリバティブ取引等に係る契約を締結している場合には、その者の事業所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算上、その国外転出の時に、その有価証券等の譲渡又はその未決済デリバティブ取引等の決済があったものとみなされます(所法60の2@AB,所規37の2A)。
U 特例の対象者
国外転出の日前10年以内に国内に住所等を有していた期間の合計が5年超である居住者で海外に移住して非居住者となる者のうち、出国時の評価額等が1億円以上の有価証券等を保有する者が対象とされます(所法60の2D)。
V 国外転出をする場合の手続規定
出国時の譲渡所得課税の特例の適用対象となる者が、国外転出の時までに納税管理人の届出をした場合には、国外転出をした年分の確定申告期限までにその年の各種所得に出国時の譲渡所得課税の特例の適用による所得を含めて確定申告及び納税をする必要があります(所法60の2@AB,同法120@,同法128)。
また、納税管理人の届出をしないで国外転出をする場合には、国外転出の時までに、その年1月1日から国外転出の時までにおける各種所得について、出国時の譲渡所得課税の特例の適用による所得を含めて準確定申告及び納付をする必要があります(所法60の2@AB,同法127@,同法130)。
W 課税の取消し
出国期間中に株式等の売却等を行わず5年以内に帰国した場合には、帰国時に出国時特例分の譲渡等はなかったものとすることができます(所法60の2E)。
なお、この課税の取消しは、帰国の日から4月を経過する日までに、更正の請求をすることにより適用を受けることができます(所法153の2@)。
X 納税猶予制度の選択
納税資金が不十分であることを勘案して、国外転出の時までに納税管理人の届出をし、かつ、その所得税に係る確定申告書に納税猶予を受けようとする旨の記載をし、その税額に相当する担保を提供した場合には、その国外転出の日から5年又は10年を経過する日まで納税猶予を選択できることとされます(所法137の2@A,所規52の2)。
ただし、その納税猶予に係る期限までに、本特例の対象となった有価証券等又は未決済デリバティブ取引等の譲渡又は決済等をした場合には、その譲渡等をした日から4ヶ月後に納税猶予の期間が終了します(所法137の2D)。
おわりに
含み益を維持したまま株式等の所有者が国外に移転するという点では、贈与、相続又は遺贈により非居住者に有価証券等が移転する場合も同様であると考えられます。
特に有価証券等の所有者の意思と関係なく発生する相続の場合には、相続発生時の時価から取得価額を控除した価額に対して出国時の譲渡所得課税の特例が適用され、被相続人の相続人(非居住者)がその被相続人に係る所得税の準確定申告を行う必要があります。
相続人が長期間の国外転勤等により非居住者となっている場合には、早めに対策等を行うべきでしょう。
税理士法人右山事務所 所長 宮森俊樹
記事提供:ゆりかご倶楽部
12月11日朝時点での新着情報は、以下の通りです。
国税庁ホームページ掲載日:平成27年12月10日
●酒類の輸出統計(平成27年10月分)を掲載しました
●「平成28年版 源泉徴収のしかた」を掲載しました(平成27年12月)
国税庁HP新着情報
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