贈与税の配偶者控除の添付資料の見直し
はじめに
贈与税は、相続税の補完税として設けられていますが、配偶者間の贈与については夫の死亡後の妻の生活保障の意図で行われることなどの理由からの、婚姻期間が20年以上である配偶者から居住用不動産などの贈与に限り、贈与税の課税価格から2,000万円を配偶者控除額として控除することができます(相法21の6@)。
この贈与税の配偶者控除(以下単に「本控除」といいます。)については、夫婦間の財産移転であることから、名義変更していないケースがあることを踏まえて、平成28年度税制改正において贈与の事実を立証するための添付資料の見直しが行われました。
そこで、本稿では、本控除の改正点と本控除の適用を受ける場合における実務上の留意点について解説します。
T 改正前制度の概要
その年において贈与によりその者との婚姻期間が20年以上の配偶者から、居住用不動産又は居住用不動産を取得するための金銭の贈与を受けた場合には、その年分の贈与税の課税価格から基礎控除110万円のほかに2,000万円までの金額が控除できます(相法21の5,同法21の6,措法70の2の4)。
本控除の適用を受ける場合には、贈与税の申告書に、居住用不動産を取得したことを確認するため、次に掲げる書類を添付することとされます(旧相規9)。
@ 受贈者の戸籍の謄本又は抄本(居住用不動産等の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成されたものに限ります。)
A 受贈者の戸籍の附票の写し(同上)
B 控除の対象となった居住用不動産に関する登記事項証明書
U 平成28年度税制改正
本控除の適用を受ける場合の添付書類については、上記TBに掲げる登記事項証明書に限るのではなく、居住用不動産を取得したことを証する書類(贈与契約書等)が追加されます(新相規1の5A二,同規9)。
この改正は、平成28年1月1日以後に贈与により取得する財産に係る贈与税について適用されます(平成28年改正相規附則2@A)。
V 実務上の留意点
1 婚姻期間の判定
婚姻期間が20年以上であるかどうかは、婚姻の届出(民法739@)のあった日から贈与の日までの期間により計算されます。そこで、入籍されていない期間は婚姻期間に含まれません(相法21の6@、相令4の6@A)。
また、婚姻期間に1年未満の端数があるときは、その端数は切り捨てます。
例えば、婚姻期間が19年10ヵ月であっても配偶者控除の適用を受けることはできません(相基通21の6−7)。
2 居住用不動産の範囲
適用対象とされる居住用不動産は、国内にある専ら居住の用に供される土地若しくは借地権(以下「土地等」といいます。)又は家屋に限られます。
そこで、受贈配偶者が取得した土地等又は家屋で、専ら居住の用に供している部分と居住の用以外に供している部分とがある場合には、その居住の用に供している部分のみが対象とされます(相基通21の6−2)。
3 重複適用の排除
本控除は、配偶者から贈与を受けた前年以前のいずれかの年分においてその配偶者から取得した財産に係る贈与について、本控除の適用を受けている者については、その適用を受けることができません(相法21の6@かっこ書)。
4 相続税の3年以内の贈与加算との関係
相続又は遺贈により財産を取得した者が、その相続の開始前3年以内にその相続に係る被相続人から贈与により財産を取得している場合には、その贈与により取得した財産の価額は、その贈与を受けた相続人又は受遺者の相続税の課税価格に加算(いわゆる生前贈与加算)されます。
ただし、本控除の適用を受けた受贈財産については、生前贈与加算の対象から除外されます(相法19@A)。
おわりに
民法上、贈与とは当事者の一方(贈与者)が、自己の財産を無償にて相手方(受贈者)に与える意思を表示し、相手方が受諾することによって成立する契約とされます(民法549)。
贈与による意思表示の方法には、口頭による贈与契約(いわゆる書面によらない贈与)と贈与時に贈与者と受贈者との相互の意思の合致を明確に贈与契約書等にしておくという書面による贈与とに分類されます。
このうち、書面による贈与については、贈与契約の成立した時をもって贈与があったものとされます(相基通1の3・1の4共−8(2))。
この場合、配偶者間における贈与契約については、その贈与の事実及び成立の日を明確にするためにも公正証書により確定日付の付与(手数料700円)を行うべきでしょう。
税理士法人右山事務所 所長 宮森俊樹

記事提供:ゆりかご倶楽部
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