経営承継法における非上場株式等評価ガイドライン(平成21年2月 中小企業庁)
■純資産方式
評価対象会社の保有する純資産価額を基にして評価する方式である。
概念的には、評価時点で、事業を新たに開始する際に同じ資産を取得するとした場合、又は、会社の資産全部を売却するとした場合に獲得できる金額を示していると言える。
純資産方式とは、貸借対照表上の資産から負債を控除して求めた純資産価額に基づいて、株式の価額を評価する方式である。
具体的な評価方式としては、評価対象会社の帳簿価額における純資産価額に基づいて評価する簿価純資産方式と評価対象会社の帳簿価額を時価に引き直した純資産価額に基づいて評価する時価純資産方式に大別される。
(1) 簿価純資産方式
簿価純資産方式は、貸借対照表に計上されている各資産の帳簿価額による純資産価額をもって、株式の価額とするものである。
(2) 時価純資産方式
時価純資産方式は、貸借対照表に計上されている各資産を時価に引き直し、その純資産価額をもって、株式の価額とするものである。
さらに、本方式には、評価益に対する法人税額等相当額を控除する方式と控除しない方式とがある。
なお、時価評価に基づいた純資産方式には、「事業を新たに開始する際に同じ資産を取得するとした場合における価額を算定する」との考え方に基づく再調達時価純資産方式と、「会社を清算するとした場合における早期処分価額を算定する」との考え方に基づく清算処分時価純資産方式などがある。いずれの場合にも、評価対象会社の各資産(特に、土地、建物、非上場株式等)の価額をどのように評価するかが問題となる。
(3) 国税庁方式
非上場株式に係る贈与又は相続に際しては、相続税法上、財産の価額は「取得の時における時価」とされているが、課税実務では、財産評価基本通達に基づき評価され、贈与税又は相続税が課されている。この財産評価基本通達に基づく評価方式は、いわば収益方式、純資産方式及び比準方式を併用した評価方式と言える。
また、所得税法及び法人税法においても、非上場株式の価額について評価を要することがあるが、所得税基本通達や法人税基本通達では、非上場株式を評価する際に、原則として、比準方式を基本に、当該株式価額を個別に評価することとしており、特例として、財産評価基本通達に基づく方式を一部修正した方式にて算定を行うことも認められている。
相続税法上の評価
具体的には、評価する株式の発行会社を従業員数、総資産価額及び取引金額により、大会社、中会社、小会社のいずれかに区分(財基通178)して、会社の規模に応じて、当該区分ごとに財産評価基本通達に定められた「類似業種比準方式」若しくは「純資産価額方式」により評価するか、又は両方式を一定の割合により併用して評価する(財基通179)
(ア) 大会社の場合
原則として、財産評価基本通達に定める類似業種比準方式により評価する。
(イ) 中会社の場合
中会社を大・中・小に区分し(財基通179 (2))、次表のとおり類似業種比準方式と純資産価額方式との併用により評価する。
区分 |
算式 |
中・大 |
類似業種比準価額×90%+ 純資産価額×10% |
中・中 |
類似業種比準価額×75%+ 純資産価額×25% |
中・小 |
類似業種比準価額×60%+ 純資産価額×40% |
(ウ) 小会社の場合
「類似業種比準価額×50%+純資産価額×50%」を併用して評価する。
なお、上記のいずれの区分においても、納税者が純資産価額方式のみによる評価を選択することも可能とされている。
なお、上記のいずれの区分においても、納税者が純資産価額方式のみによる評価を選択することも可能とされている。
また、いわゆる少数株主が株式を取得する場合には、特例として、株式を所有することによって受け取る1
年間の配当金額を、10%で割り戻して評価する配当還元方式を用いる。具体的な評価方式は、次のとおりである(財基通188−2)。
(注)配当金額が2 円50 銭未満及び無配の場合には、2 円50 銭とする。
以上の評価方法は、いわゆる基準(標準)的な価額であるため、本来の「時価」から乖離することがあり得る。
そこで、「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」(財基通6)ことにしている。
考察
実際、非上場会社の株式の売買においては、土地と同じように幅があります。
しかし、土地のように市場がない。しかし、自由な取引となるものだが、実際には、経営の承継のとき、しかも、同族関係者以外における際に相互納得のもとに行われるものであるのが建て前だが、個々の企業において、慣習的に決められている場合も多いものでもある。
税法上の問題はつきまとうが、相互納得がやはり原則であるべきと思う。当然価格の幅があって当たり前のことと思うが。
|
|
|
|